【社員の安全を守る】ために必要な「防火管理者」について知ろう!

あなたは、2001年に東京都新宿区歌舞伎町で起こった火災事故をご存知でしょうか?

この火災事故によって44名が死亡し、戦後の日本で起きた火災で5番目に被害の大きい事故といわれています。

歌舞伎町といえば、都内有数の繁華街で多くの雑居ビルが所狭しと立ち並び、多くの人で賑わっているエリアです。

実はこの火災事故の被害が大きくなってしまった原因として「防火管理の不徹底」がメディアでも大きく取り上げられました。

この痛ましい事故は本来、危険を知らせるために設置された「自動火災報知設備」が、誤作動が多いという理由で電源が切られていたり、火災報知器が内装材で覆われるなど違法な内装によって、被害が拡大したといわれています。

雇用主には、社員を守る責任がある

なぜ、冒頭からこんな話をしたのかというと、オフィス・事務所・会社・店舗の移転先を決める時は「利便性」の良し悪しばかりが注目されがちですが、実はそれ以上に、「安全面」についてもしっかりと考えて、対応する必要性があることを伝えたかったからです。

工事現場では常に「安全第一」が掲げられているように、オフィス・事務所・会社・店舗の移転も「安全第一」で進める必要があります。

あなたは、会社は従業員に対して、安全配慮義務があることを知っていますか?

安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは、会社と従業員が雇用関係にある場合、労働契約法により、使用者である会社は従業員が安全に業務に従事できるよう必要な配慮をする義務があると定めている法律です。

もし、使用者である会社が安全配慮義務に違反し、従業員が損害を被った場合、使用者である会社は、損害賠償責任を負うとされているのです。

したがって、オフィス・事務所・会社・店舗を移転する際も会社として、利便性ばかりを考えるのではなく、まずは何よりも社員の安全を考えることが先決です。

「新しいオフィス・事務所・会社・店舗は、社員が快適な環境で仕事をすることができるのか?」

「新しいオフィス・事務所・会社・店舗は、地震や火災など、いざという時に、社員が安全に避難をすることができるのか?」

ということをしっかりと考える必要があるのです。

「いざという時」に、社員を守る防火管理者とは?

さて、冒頭のような痛ましい被害を出さないための法律・制度に、防火管理者の設置義務を定めた法律・制度があることをあなたは知っていますか?

一般的にはあまり知られてはいませんが、下記のように、一定以上の人数や広さを有するビルに対しては、「防火管理者」の設置義務があります。そして、防火管理者は東京消防庁へ届出が必要になる資格なのです

  • 火災発生時に自力で避難することが著しく困難な者が入所する社会福祉施設等(消防法施行令別表第一(6)項ロに掲げる防火対象物の用途)を含む防火対象物のうち、防火対象物全体の収容人員が10人以上のもの

  • 劇場・飲食店・店舗・ホテル・病院など不特定多数の人が出入りする用途(特定用途)がある防火対象物を「特定用途の防火対象物」といい、そのうち、防火対象物全体の収容人員が30人以上のもの(前1を除く。)

  • 共同住宅・学校・工場・倉庫・事務所などの用途(非特定用途)のみがある防火対象物を「非特定用途の防火対象物」といい、そのうち、防火対象物全体の収容人員が50人以上のもの

  • 新築工事中の建築物で収容人員が50人以上のもののうち、総務省令で定めるもの

  • 建造中の旅客船で収容人員が50人以上のもののうち、総務省令で定めるもの

  • 同一敷地内の屋外タンク貯蔵所又は屋内貯蔵所で、その貯蔵する危険物の数量の合計が指定数量の1,000倍以上のもの

  • 指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う防火対象物で、床面積の合計が1,500㎡以上のもの

  • 50台以上の車両を収容する屋内駐車場

  • 車両の停車場のうち、地階に乗降場を有するもの

    情報源:東京消防庁のホームページより

いかがでしょうか?

あなたの会社は、どの条件に当てはまりますか?

責任は重大!防火管理者の役割とは?

前述のように、防火管理者の選任は法的に位置付けられている義務です。そして、防火管理者には、このような重要な役割があります。

防火管理者は、防火の知識や訓練を受けていて、いざという時に率先して、社員を守る役割を果たします。

また、防火管理者は、万が一、火災が発生した場合に被害を最小限に食い止めるための啓発的な役割も果たしています。

消防法などの法令を遵守し、建物の防火対策の不備などを発見することも仕事の一つです。

防火管理者を選任することにより、防火や避難のための用具を正しく管理してもらうことで人命が守られることにつながるのです。

「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」、二種類ある防火管理者が「できること」の違いとは?

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まず、防火管理者とは、「多くの人が利用する建物」において、火災の被害を防止するために防火管理に関する消防計画を作成し、防火管理業務をおこなう責任者のことです。

そして、防火管理者は「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」の2種類に分けられます。

この甲種、乙種については甲種の資格を取得した場合は、乙種の資格も含んでいますが、乙種のみ取得した場合は甲種資格を含まないため、新たに甲種防火管理者講習を受ける必要があります。

甲種防火管理者の資格を取得するためには「効果測定試験」に合格しなければならず、乙種防火管理者資格を取得するよりも難易度が上がります。

元消防職員の場合は、消防本部の審査によって講習を受講すれば、試験を受けずに資格を付与される場合があります。

甲種防火管理者が必要とされる条件、そして、乙種防火管理者が必要とされる条件は下記のようになります。

「甲種防火管理者」が選任される条件とは?

  • 不特定の人が出入りする映画館、病院、複合商業ビルなどの特定防火対象物で、収容人数が30名以上で、延べ面積が30平方メートル以上
  • 特定の人が出入りする建物で、収容人数が50名以上、延床面積が500平方メートル以上
  • 特別養老人ホーム、グループホーム、障害者支援施設などの福祉施設の場合、延床面積にかかわらず収容人数10名以上

「乙種防火管理者」が選任される条件とは?

  • 甲種以外の防火対象物の防火管理者として選任される(延床面積が甲種防火対象物未満のもの)

この選任条件からわかる甲種乙種の違いは、甲種の資格を持っていると特定用途建造物の場合300平方メートル以上と一部の福祉施設すべて、非特定用途なら500平方メートル以上の建物の防火管理を行うことができるというものです。

もし、防火管理者の資格をとることになったら、「甲種の防火管理者」の資格をとれば、活躍できる幅が広がります。

一般的な小規模オフィスの場合ならば、乙種防火管理者の資格で大丈夫です。

資格を取得する際は、事前に管理する建物の面積を確認するようにしましょう。

防火管理者になるためには、どうすればいいのか?

甲種防火管理者・乙種防火管理者の資格を取得するためには、決められた講習を受ける必要があります。

防火管理者は、防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある人で、防火管理に関する知識及び技能の専門家としての資格を有していることが必要とされています。

その資格は、消防長等の行う防火管理講習、つまり、修了者又は防火管理者として必要な学識経験を有すると認められる者(消防法施行令第3条第1項第1号ロ、ハ及び消防法施行規則第2条に定める者)に付与されます。

甲種防火管理者の資格は2日間、乙種防火管理者の資格は1日の講習を修了することで取得することができます。

受講資格としては、中学校卒業程度以上で日本語が理解できれば、だれでも受講が可能です。

市町村の消防長が主催する場合、地域によって申込方法や受講料が変わる場合があるので消防本部に確認する事をオススメします。

講習コースは3種類あります。

  1. 甲種防火管理新規講習
  2. 乙種防火管理講習
  3. 甲種防火管理講習

そして、講習時間と受講料の目安は下記にようになります。

  1. おおむね10時間 6500円
  2. おおむね5時間 5500円
  3. おおむね2時間 5500円

防火管理者の選任申請のために、消防庁(署)へ届け出ましょう!

防火管理者の資格を取得したら、防火管理者証が交付されます。

この証書と防火管理者選任届出書の二つをもって、近くの消防署に申請しましょう。

選任届出書は、消防庁のホームページからダウンロードすることができます。

[消防庁のホームページ]

申請後、受理されたら防火管理に対しての義務を遂行したことになり、消防法に基づいた建物として認められます。

安全を確保するための「3ステップ」とは?

防火管理者を選任することは、社員の安全を確保するためには不可欠です。

ただ、安全をしっかりと確保するためには、さらにやるべきことがあります。

安全を確保するためには下記の3つの順番で、リスクを減らしていきましょう。

【ステップ1】本質的な安全を確保する

「本質的な安全を確保する」とは、そもそもリスクが少ないオフィス・事務所・会社・店舗を移転先に選ぶということです。

例えば、飲食店が入っているオフィスビルに入る場合は、その飲食店の火の不始末が起こった場合、巻き込まれる可能性はゼロではありません。

一方で、飲食店などの火を頻繁に扱うことのない事務所であれば、火の不始末が起こるリスクは低くなります。

【ステップ2】安全防護の仕組みを確認する

ステップ1の本質的な安全確保を検討し尽くした後は、万が一、事故が起こってしまった場合、それを防ぐための仕組みを確認していきましょう。

例えば、もしもの時、速やかに避難することができるような建物の構造になっているのか、防火シャッターがしっかりと作動するのかなどをしっかりとチェックしていきましょう。

そうすることで、万が一のことが起こってしまった時、このような安全防護の仕組みが大切な社員を守ってくれるのです。

【ステップ3】防火管理者を中心に、日々の活動として安全を守る

ステップ1の本質的な安全確保を検討し尽くして、安全防護の仕組みもしっかりと確認した後、最後の最後の防波堤として、防火管理者を中心に人間の日々の活動によって、安全を守っていきましょう。

まとめ

普段、オフィスビルを利用していると、火災報知器の点検や消化器の点検をしている人を見かけた事があるかもしれません。

このような防火管理者の日々の地道な業務によって、ビルを利用する人の命を守られているのです。

一般的にはビルの管理会社が担当する領域ですが、管理会社が入っていないビルなどでは、オーナーが直接チェックすることもあるようです。

そのため、防火管理者はオフィスビルにとって必要な存在であり、防火対策の要なのです。

火災は不注意が原因で発生するだけでなく、地震などの自然災害に伴って発生します。

そして、私たちが住むこの日本は、とても自然災害が多い国です。

ですのでいつ、災害が起こり、それが火災につながってもおかしくはないという現実があります。

日々の平穏な日常は突如、崩れてしまうこともあるのです。

ですので、会社として、新しいオフィスを探す際、環境や防災体制がしっかりしているかを厳しくチェックすることは、必要不可欠なことなのです。

社員の安全確保を基本としながら、素晴らしいオフィス移転ができることを願っています。